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「……史香先輩って、案外意地悪ですよね」
艶やかな髪の上に手を置いて頭を撫でると
「だって聞かれてないじゃない」
胸に押しつけられてうまく声が出せないのか、くぐもった声がする。
「じゃあ……その……」
付き合ってください、は何か軽くて嫌だ。
それなら、何て――――。
「……キスしていいですか」
一瞬、息を飲んだような気配がした。
「いきなり、それ?」
「だって、それが嫌じゃなかったら、……先輩も、ってことでしょう」
肌に触れないように前髪にキスをすると、彼女は溜息をつく。
「……蓮見君って……ほんと独特だよね。責めてないよ。面白いなってだけ」
そう言って、彼女は僕の背中に両手を回して独り言のように呟く。
「細く見えるけど、やっぱり男の子だよね。手がぎりぎり」
むず痒い感覚が全身に走って、腕に力をこめて頬を重ねた。
耳元から、首筋から、甘い匂いと熱が上ってくる。
耳に唇をつけると、んっ、と息を止めるような声を漏らす。
「……くすぐったい」
今までそういう話がなかった、ということは、こういうことをされるのも僕が初めて、でいいんだろうか。
今度は耳たぶを唇で挟むと、ぎゅっとしがみついてくる。
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