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「……気が済んだ?」  いくら探しても知ったほくろの他は疑わしいものは何も無く、ほっとする反面で自己嫌悪を感じていると、彼女の声がして我に返った。 「……ああ」  溜息をついて、彼女は背中を向けて体を起こす。 「……って言っても、痕が無かったからって潔白の証拠にはならないでしょ。……どうする?」 「どうする、って……」 「……いっそ別れる?」  乱れた髪を掻き上げて、顔だけ振り返って彼女は言う。 「何かあるたびに、疑って不安になったりするくらいなら、あたしが居ない方がいいんじゃないの?」 「……君が……」  その方がいいなら、と言えるなら、そうした方がよほどこの人のためになるのかも知れないけれど。 「……君がどう思ってても、あいにく僕は別れる気は無いよ。だから、こうやって迷惑をかけて、困らせてる」  彼女はぱちぱちと眼を瞬かせて、それからふっと笑った。 「可笑しいかい」  首を振って彼女は言う。 「貴方がいいならいいけど。……じゃあ、それ取って」 と、僕の足元にある脱がせたものを指す。 「ああ……」  渡してやると、受け取って胸に抱えてまた背中を向ける。  その頼りない後ろ姿を見ていると、どうにも切なく痛ましい思いがして、腕の中に抱きしめた。
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