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 普段は、彼女が僕を名前で呼ぶことはほとんど無い。  稀に呼ぶのは、こういう時だ。 「お願いだから、好きにさせて。……明日になったら、何も無かったことにしてあげるから」 「史……」  ぞく、と体に電気が走った。  布越しに彼女が下腹に手を触れた。  唇を舐めてぞわぞわとした感覚を与えながら、わざと弱くもどかしい手つきで下から撫で上げる。 「ッ、待っ……」 「なに?」  キスと胸への刺激だけで硬くなった先をぎゅっと握って先端を指で擦る。  下着とパジャマの上からでも、それは十分過ぎるほどの刺激で、びくっと体が跳ねる。 「んッあ……」 「ごめんね。あたし、貴方のそういう顔が好き。敏感で、今にも泣きそうで」   「っ……もう四十の、性格の悪い旦那なんか弄んで、なにが……」  するりと素肌に入り込んだ手が直に触れて、先走りを塗り広げるように手のひらで撫でる。 「あ……」  仰け反った僕を押し倒すと、胸の先を、かり、と噛んで歯を立てる。 「っ……こんな声上げさせて……何が愉しいんだい」 「小説家なら、分かるでしょ?人の嗜好はいろいろだって」  ぬるぬると扱かれて、息が乱れてくる。  ちかちかと目の前が白くなって、体が熱くなって。  はぁ、と息を漏らした唇を彼女がまた塞いで、溜息も喘ぎも吸い取って、ただ快楽を与える。
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