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被さってきつく抱いて首筋に歯を立てると猫みたいな鳴き声をあげる。
なぜだか苛ついて、楔を打ち込むように何度も腰を打ちつけた。
その眼に映してもらえないなら、僕が誰でも同じなのじゃないかと思えて。
「……史香」
眼を開けた彼女は、ぼんやりと僕を見上げる。
「ちゃんと見て」
「……見てるよ」
赤く上気した頬にくちづけると、彼女が言った。
「何が怖いの。今度は」
はっと見下ろすと、僕の背中に手を回して、引き寄せて同じことをする。
僕の頬に唇を押しつけて、彼女が囁く。
「何が怖いの」
「……なんでもない」
そう答えると、今度は、耳たぶに噛みつかれた。
甘く噛んで、唇で食んで舐める。
「っ……」
どくん、と繋がったところが脈打つのを感じる。
彼女はぎゅっと僕を抱きしめたと思うと、首筋に唇を触れた。
ひたりと押しつけられてふるえた瞬間、口を開けて歯を立てられた。
さっき耳を噛まれたのとは違って、ぎりぎりと歯が食い込むほどの力で。
けれど、全くの苦痛じゃなく、甘い痛みに感じられるくらいの。
ぞく、として思わず彼女の中に吐き出しそうになるのを堪える。
「……史……ッ」
ほんの数秒だったはずなのに長く感じられた時が過ぎて、彼女は力を抜いた。
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