雷鳴

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「……逆ですけど」  ぽつりと、彼は言った。 「え?」 「……だから……僕が、嫌われてるかもしれないと思って、……これ以上嫌われないように話しかけるのをやめていたんですが」 「はい?」  見上げた彼の、男性にしては白い頬がみるみる染まっていく。 「だから……」  言いかけた彼の脇を物珍しそうにこっちを見ながら通り過ぎていく女子学生たちが居て、我に返ったように彼はひとつ息をつく。 「……このままじゃ見世物になりそうなので、歩きながら」 と私の手から傘を取り上げた。  ざあ、と見る間に雨は激しくなり、これを強行突破しようとしてたら大変なことになっていただろうなと反省する。  雷も、まだそれほど近くはないのだろうけど時々閃光が走る。  一人なら途中で固まってたかもしれない。 「……もうだいぶ前ですけど」  彼はぽつぽつと話し出した。 「図書館で先輩を見かけたんです。そうしたら、同じ学年の人ですかね、男の人と話してるところで」 「……もしかして、声の大きいうるさい奴?」 「はい」 「ごめんね。騒がしくして迷惑かけて。同じゼミの男なんだけど。……で?」
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