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「……何か、文献の話をしていて、立ち聞きしてたわけじゃないですけど、僕も近くの棚に用があったので何となく聞こえてたんです。そうしたら、話が終わった後にちょうど沙紀先輩が来て」
「うん」
何となく、覚えがある。
「ほんと迷惑、やめてほしい、って沙紀先輩にぶつぶつ怒ってるのが聞こえて。……あれは、その同じゼミの人に対してのことだったんでしょうけど、僕もそう思われてたんじゃないかと、思ってしまって」
「……なんで?」
「いや、下の学年だから気を遣って言わないでくれただけで、もしかしたら今までずっと迷惑に思われてたんじゃないかと」
しゅん、と落ち込む音が聞こえそうな表情で俯く彼に、私は慌てて言った。
「や、それは違うから!……ていうか、彼は悪気じゃないけどちょっと迷惑な人で、周りもそう思ってるし沙紀も知ってるから、つい言い方きつくなっただけで」
「でも、僕もそうじゃないですか。悪気でなくても皆に迷惑かけて嫌がられている点では」
「いや、それは……」
この子が私の知らないところでそう思われているのは、事実なのだろうけど。
「でも、あたしはそんなの思ったことないし。そもそも、迷惑だったらわざわざ学校の外でまで会ったりしないから」
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