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雷鳴
卒論資料の確認のために久しぶりに立ち寄った図書館で、見覚えのある人影を見つけた。
2年生の蓮見千尋。
背の高い、少し癖のある髪に整った容貌は綺麗ではあるけど、どこか話しかけるのを躊躇う空気を纏っていて。
それでも、普段は――――というか、少し前までは、私を見かけると話しかけてくれてたんだけど。
ここしばらく、もう3週間くらいになるだろうか、ぱったりと顔を見ることがなくなった。
まるで避けられてるみたいに。
話しかけようか、でも向こうが寄って来なくなったなら、こちらから接点は持たない方がいいのか……と考えていた時、いきなり後ろから肩を叩かれた。
びっくりして振り返ると同じゼミの男子だった。
「よ!元気?卒論進んでる?」
場にそぐわない大きな声に、私は慌てて声をひそめて言う。
「……あのさ、前も言ったけど、ここ図書館なんだけどボリューム落としてくれる?周りにも迷惑だし、こっちも集中してる時に話しかけられたくないし」
「悪い悪い。あ、そうだ。この前ゼミ長がさ」
人の迷惑を全く意に介さず話し始める相手を見て、思う。
『あの子さ、史香の前じゃ猫被ってるかもしれないけど、同学年の子にはほんと態度悪いらしいからあんまり関わらない方がいいよ』
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