雲のコラージュ

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手が汚れるのも気にせず、僕は缶の中に手を入れ、一本一本あの吸殻を探す。 マルボロメンソールの8mm、100s。 彼女が吸っていたものだ。 かき出す度に灰がぶわっと広がる。 顔まで煤けそうだ。 だけど、探す。必死に探す。 砂漠の中から一粒輝くダイヤを探すかのように、目を凝らす。 どれくらいそうしていただろうか。 集中していたから解らなかったけれど、僕の必死さは神さまに通じたようだ。 「……あった……」 吸い口に赤い口紅の跡。 ココシャネル、ルージュフラッシュ106番。 吸殻も口紅の痕跡も、すべて彼女のものだった。
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