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「…先輩?」 え……? 「先輩…卯月先輩!」 やば…… 「卯月先輩!真城です!真城太一です」 ああ……後輩の…あいつが可愛がってた奴だ…… この雑踏の中でよくも見つけたな… 歩みを止めない私の腕を掴む手に振り向く。 「…あら、真城?」 「はい、真城です…」 「わぁ~久しぶり 元気にしてた?」 「元気にしてたじゃありません。今までどこに居たんですか?……皆心配して…ぐす…仲島先輩な…んか狂ったように探し回って…ぐす…」 あの頃から泣き虫だったけど……相変わらずだ… 「…皆には心配掛けたと思う…すまなかったと思ってる…」 「仲島先輩も…」 「あいつの話しはしないで」 「でも…先輩は卯月先輩のこと本当に本当に好きだったんですよ」 「へぇ~本当に本当に好きだったのに他の女を抱いたりするんだ」 「…それは」 「ごめん、真城。とんだとばっちりだね、もう昔のことよ、済んだことだわ」 「済んだ事じゃありません。先輩はまだ卯月先輩のこと…」 「私には済んだこと。もう6年になるわ」 そう言って真城に左薬指のリングを見せた。 「……結婚したんですか?…」 「そうよ、子供もいるわ」 「………」 「もうあれから6年たつのよ」 俯いた真城の嗚咽が聞こえる。 「かあちゃん!」 向かいから、旦那の拓也の手を離して裕斗が走ってくるのを抱き上げた。 「ひろと!」 私の首に小さな手を回すと傍に立っている真城にその黒目がちの瞳を向ける。 「どうしたの…泣いてるの?」
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