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最近、向かえの旦那さんを見掛けないと思っていたら、事故に遇って仕事を休み、引き籠りがちだったのだと云う。
何でもタクシーに跳ねられて脊髄に損傷を負い、タクシー会社に三千万円の賠償金を支払わせたらしい。
旦那さんは、そのお金で家を新築したが、まだ思うように歩けず自宅でリハビリする毎日を送っていた。
ある夏の熱帯夜、遠くから鳴るチャイムの音を聞いた。
仕切りに鳴り響くチャイムを煩く感じ、窓から外を見ると、向かえの家の入り口に人影が見えた。
しかし人影の背丈が自棄に低い。
闇の中に漂う人影を、目を凝らして凝視した。
するとそれは下半身…と云うか大腿から下の、二本の足だけの人影だった。
ああ、事故に遇う前の旦那さんが帰って来たのだ、と思った。
が、後で聞くと、旦那さんを跳ねたタクシーは以前にも事故を起こしており、轢かれた人物は両足を切断して亡くなったのだと云う。
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