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「なぁ、あんた、ちょと、協力してくんないかな」と、男は言った。
私を起こしたのは、四十代くらいの中年の男だった。男の服も白いTシャツにスエットズボンと私と同じ服装をしていた。
「ここ、どこだ? おたくは誰? おたくと私はどうして一緒にこの部屋にいる?」
「おいおい、いきなり口を開いたら、今度は質問攻めか? まるで職質みたいだな」
私は男の言葉にはっとさせられた。そうだ、この男が拳銃を隠し持っているかもしれない。私は冷静を欠いていた自分を律した。相手を問いただす前に、まずは自分から名乗るべきなのだ。
「すみません。少し動揺していたようです」
男はニヤリと笑った。
「私は工藤謙介といいます」
「オレは沢田淳文だ」
すぐにも拳銃のありかを聞き出したい衝動にかられた。しかし、相手が善人か悪人か判らない状況では、自分が刑事だという事実は伏せておく方が得策だと思われた。
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