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「蓮! あれに乗りたい!」
「だめだ、今ドライブ中だ」
「あれに乗る!」
「だめだって言ってるだろう!」
「いやだ、乗るんだ!」
どこまでもジェイに弱く、ジェイに甘い蓮が拒み続けられるわけもなく。
(2人乗りの方じゃない、大きいんだ、人もたくさん乗るんだ)
そう心で呟いた。それが救いだ。だがジェイは最初から2人乗りに乗るつもりでいたらしい。
「2人乗り、何色がいい?」
「あっちはだめ! 絶対に、だめ!」
「……ケチ。じゃ、かめ丸とはくちょう丸、両方乗りたい!」
「りょ、両方?」
「じゃなかったら2人乗り!」
しばらく言い合いをしたが、やはり蓮は負けた。
はくちょう丸は、純粋に蓮も楽しむことが出来た。だが続けて亀にも乗るとなると、ちょっと切符売り場で居心地が悪い。だからジェイに買いに行かせた。
「上の方に乗りたいです」
「席は決まってないですから」
そのやり取りに耳を塞ぎたくなってくる。乗ってからも階段を急いでジェイの後について行く。
「ジェイ、これで最後だからな。この後はドライブしながら寮に帰るからな」
「うん!」
(『旅の恥はかき捨て』……いい言葉だ……)
-その9- 完
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