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2日目
今日は『世界のガラス館』に行く。世界中から集められた手作りガラス製品が約2万5000点展示された日本最大のギャラリーだ。直輸入品からオリジナル商品がある神秘的なガラスの館。
敷地内には猪苗代地ビール館や、地元の銘菓やスイーツを集めた猪苗代おかし館が併設されていて、大人も子どもも楽しめるようなところだ。施設からは磐梯山の絶景が展望できて素晴らしい景色を目の当たりにできる。
今日はここの見学をしてから自由行動となり、工房体験をする子どもたちの家族とガラス館を出るメンバーたちとで別れることになる。
工房体験は子どもたちは無料体験できるように予算を組んでいた。とんぼ玉というガラスの玉づくり。エッチンググラスといって、ガラス器に模様を描く体験。大人は実費を払って自由参加する。
ただ、工房内の室温は夏場は約40~50℃と厳しい環境の中、扱うバーナーの温度は1000℃以上。そのため専門スタッフが一人一人につくので、一度に4人までしか体験できない。
対象の8歳以上の子どもたちは幸いにも和愛、花月、花音、ほのかの4人だ。みんなわくわくしてその時を待っている。
作業が終わると約一か月ほどして手元に宅配で送られてくる。オプションをお願いすると、小さい玉を使って携帯ストラップにしてくれる。
「私も」
「父さんはだめ! 時間も忘れて懲り始めるだろう? ここは時間制限もあるし父さんの自由にはならないからね!」
口出しをしない、という条件付きでなんとか保護者として入れてもらい、それで我慢することにした。しょんぼりしたまさなりさんは、心の中で(私も工房を作ろうか)などと考えてしまった。
大人にも体験したい者たちはいて、4人ずつのグループに分かれた。
体験は全員Aコース。それぞれ家族の分をストラップにするつもりだ。野瀬は妻と娘のために。浜田は陽子とこれから生まれてくる子どものために。完は自分の彼女と、木内のカップルのために、と不思議な参加だ。これは木内が参加費を出すから、と頼んだ。彼女とのお揃いのストラップが欲しい。そして桜井を中心とした新人たちのグループ。
「お前、いいのか?」
「お前?」
「あ、橋田さん」
どうも澤田は橋田が苦手なのだが、まるでたまにミントを欲しがるように味わいたくなる。
「保護者をしなきゃならないし、ペアで持つ相手もいないし。……欲しいことは欲しいけど」
「そうか……じゃ、俺が参加してやるよ」
「澤田氏が?」
「ペアって思わなきゃいいだろ? この後暇になるからな」
ガラス館の中の光の加減もあって、橋田がうろたえたように赤くなったのが澤田からは分からない。
「いいの?」
「いいって。ちょうど男グループで1人分空いてるしな。自由行動、好きにしてていいから」
「あ、ありがとう……楽しみにしてる」
「色はなにがいい?」
「……赤を……澤田氏は? 青なんてどうかしら」
「じゃ、それでいいや」
澤田にはよく分かっていない。自分の思いも橋田の思いも。
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