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更に二十年の月日がたった。
あの時の野球選手が今何をしているのか私にはわからない。
私に劣等感を与えた相手が今何をしていて、どのように過ごしているかやっと知らずにすんでいたのだった。
私は趣味人になるのを諦めていた、今は定年退職したものの年金だけでは生活できず、生計の為にアルバイトを始め、築古の1DKアパートに一人で住んでいた。
どこで間違えたのだろうか。
そんな考えが頭を過ぎった。
自分は何も見つけられなかった。
そこまで考えて頭を振った。
いや、違うそうじゃないのだ。と。
自分は何も見つけられなかったのではなく、自分は何もやってこなかったのだ。
深夜のニュース番組をつけるとそこには新たに生まれたスターの活躍が報道されていた。
親と子以上に年の離れた彼の輝かしい功績を目の当たりにして、コーヒーの入ったカップが残り少なくなった私の歯に当たってカツカツと音を鳴らしたのだった。
~おわり~
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