氷華

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「兄ちゃん。戦争から帰ってきたばかりっぽいから……。その話しを切り出しただけだ……。信じるか信じないかは、兄ちゃんに……委ねるから…………」 とうとう酔っ払いは、酔い潰れてしまい、そのまま夢の世界へ旅だってしまった。 俺は残りのビールを飲み干した。 「おじさん。会計頼む!」 「はいよー!」 「あ、それとこの人の分も一緒に」 「あら? 吉高(よしたか)のダンナ寝ちゃったのかい?」 どうやら、この酔っ払いはこの店の常連客だったようだ。 「お兄さん。こいつの分も払わなくていいよ」 「いや、払うよ。面白い話しが聞けたから」 隣で幸せそうな顔で寝る酔っ払いを横目で見る。 「ん〜そうかい。じゃあ、安く付けとくよ」 おじさんは、俺が頼んだビールと酔っ払いが頼んだ品の合計を計算して、そこから何割が差し引かれた金額を請求された。 俺は、おじさんに金を渡して、店を後にした。 外は、少しだけひんやりとしていた。雪の季節が終わりを迎えようとしている。道にも残りわずかな雪がチラホラとあるだけだ。 「……“氷華”ね」 さっきの酔っ払いの話しが本当なら、探してみる価値はあるかもしれない。 それに、戦争上がりで金も碌にない状態だ。少しでも金を手に入れないと、食いっぱぐれてしまう。 「馬鹿らしいけど……。探してみるか」 俺は、目の前に(そびえ)え立つ山へと歩き出した。 ーー数日後ーー 「いっやぁああああああ!!」 「テメェ! マジでふざんけなよ!! なんで、なんで、穴の中覗いたんだよ!」 「お前ら、ケンカする暇あるなら、走れ!」 あれから数日。俺は“氷華”探しをしに山へ篭る生活を送っていた。幸いにも、野宿の知識と知恵はあったから今もこうして生きていた。 そんな時、俺と同じ目的を持った人が二人現れた。 一人は、俺と同じどこからか話しを聞いて、この山に入った。“白鳥由貴智(しらとりゆきち)”。現在、女みたいに叫び声を上げている野郎だ。
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