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* * *
「夏菜!」
「兄さん……」
オレの妹が目を覚ましてくれた。
「良かった、一生覚さないと思ったよー!」
夏菜の目覚めに喜びのあまり飛びつくと、夏菜は嫌な顔をしたが、オレを蹴散らさなかった。
「大げさすぎ」
「へへっ」
「あれ? 九条さんは?」
夏菜は九条がいないことに気づいた。オレは、九条は山で“氷華”を探していること伝えた。
「そっか……」
夏菜は窓から山を眺めた。たぶん、九条のことが心配だろう。
「大丈夫だって、あいつなら。“氷華”を持ってひょっこり帰って来るよ! それか、見つからなかったって言う感じで来るかも!」
夏菜はオレのおちゃらけに笑った。少し元気になってくれて良かった。
「そうだね。九条さんなら大丈夫だよね?」
「ああ、大丈夫だ! だから、待ってよう。アイツもお前が元気になって喜ぶだろうし」
「うん!」
九条、早く帰って来いよ。
夏菜も元気になったんだからよ。
あ、“氷華”も見つけたら見せろって言わないとな。
「早く帰って来いよーー相棒」
九条が死体となって帰って来たのは、それから二日後のことだった。
遺品の弾入れの中には、“何かが溶けたような水”が入っていたという。
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