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『東亜医科大付属病院』
私は高科小夜(タカシナサヨ)
微弱陣痛で三十時間、一人で苦しみ、最後は帝王切開で女児を出産した。
私の顔を見るなり、夫・高科守(タカシナマモル)は残念そうに言い放った。
「…腹切ったのに…女かよ…小夜」
私は守さんの言葉を訊き、呆気に取られた。
「次は男の子を産んでよ…小夜さん」
守さんの隣に立つのは姑の高科律子(タカシナリツコ)
「そうだぞ…小夜」
二人して、次は高科家の跡取りとなる男児を催促した。
私は第一子を産んだばかりで、疲労困憊だと言うのに。
二人共、私に対しての労いの言葉はなかった。
でも、私が嫁いだ高科家はごく一般家庭で、人様に誇れる名家ではない・・・
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