元夫はマザコン

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「槇村です…入りますよ…」 私のオペを担当した槇村奏弥先生が入って来た。 妊娠経過中は別の産婦人科医の診察を受けていたが・・・ 出産ラッシュで私の担当医は別の妊婦の分娩に入り、急遽槇村先生が担当医になり、帝王切開での出産になった。東亜では一番有名な産婦人科医。 槇村先生は私の回診に看護師と共に訪れた。 「具合はどうですか?高科さん」 「…大丈夫です…」 「・・・俺も母子の命がかかってる言われて…同意書にサインしたが…本当に腹切る必要が有ったのか?」 助産師の中田さんから訊いた話だけど、守さん・・・手術の同意書のサインを拒否したらしい。私も本当は自然分娩を希望していた。 「…奥様の体力は限界でしたし、赤ちゃんの心拍も弱っていました・・・帝王切開術は母子の命を護る為の適切な処置であったと俺は考えています」 でも、槇村先生に諭され、私自身と赤ちゃんの命を護る為に手術に同意した。 「・・・おかげで…次子の妊娠が一年以上空いてしまったじゃねぇか・・・どうしてくれるんだ?俺の家族計画が狂ってしまったぞ…」 守さんは突然、槇村先生の白衣を襟を掴んだ。 「ま、守さん!?止めて下さい…槇村先生は私と赤ちゃんの命の恩人です…」 私は痛むお腹の傷口を押えながら、カラダを起こして制した。
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