元夫はマザコン

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「高科さん…横になって下さい…」 看護師の有藤さんが私をベットに寝かせてくれた。 槇村先生は手際よく、帝王切開の傷口を消毒し始める。 「…次は絶対に男の子が欲しいんですが…どうすれば…男の子産めますか?」 「…産み分けの方法は色々とあるけど…どれも…百パーセントの確率ではないよ…それに今は…自分のカラダの心配をした方がいいよ…高科さん」 「槇村先生…私・・・」 「・・・ご主人、オペの同意のサイン、拒否していたけど…君も最後まで自分の力で産むと言い張ったね…それはやっぱり…次子のことを考えて?」 「・・・」 夫の希望で仕事を退職。今は守さんの収入だけで暮らしていた。多分、見栄張りの人だから、私がパートに出るとか言えば、猛反対するだろう。 色々と試算しても、ひと馬力で都心に住み、子育てをしようとすれば・・・ いくら守さんが高給とは言え、一人が限界。守さんもそう思って高科家の跡取りとなる男児を切望した。 私もこの妊娠出産が人生においてたった一度だけの出産だと思った。 だから…最後まで自分の力で産みたかった。 帝王切開で産めば…後でお義母さんに嫌味を言われそうで嫌だったのもあるし・・・ 「痛みが強いようだから…鎮痛剤を処方しておくよ…」 槇村先生の声で私は我に返る。 「すいません…」 「今は何も考えない方がいいよ・・・出産後はカラダと心のバランスが乱れやすい。どうしても思考もマイナス思考になる。高科さん…貴方は頑張りました…ご主人の代わり…貴方の労を労いますよ」 「・・・槇村先生…ありがとう御座います」
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