摩周湖は映す

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 北海道の自然は雄大だ。 数え切れない程の絶景が各所に点在している。  その中でも俺は摩周湖が1番気に入っている。 アイヌ語でカムイトー(神の湖)と呼ばれるに相応しい湖面は、まるで鏡の様にこの世の全てを映し出す。 空も、森も、空気も青く透き通った湖に溶けて1つになっている光景を目の前にした時、途方も無い安堵感で満たされてそのままこの身を任せてしまいたくなる。 しかしそんな優しさを持ち合わせる反面、湖の周辺は急峻な壁になっていて湖面に下りる事は決して叶わない。 その人間を寄せ付けない気高さに俺は神秘的な美しさも感じていた。 「ねぇ、今日は何処行くの?」 「うーん…久しぶりに摩周湖行かない?」 「うん、行こう!アイスあるかな?」 「レストハウスにあったような…。」 「んん!アイス食べる!」   付き合って1年程になる彼女。 先月プロポーズもして親に挨拶も行ってきた。 なのに、俺がこんな事になってしまったと知ったら全て台無しだろう。 別れられてもおかしくはない。 寧ろ彼女のこれからの人生を考えれば別れるべきだ。 生きていられる可能性が圧倒的に低い男といたって時間の無駄だ。 人生は有限なのだ。 ならばここは俺が彼女を突き放して別れよう。 それが彼女を想いここまてで付き合わせた男としての責任だ。
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