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しばらく考えていると、拓人が言葉を足してきた。
『別に、興味本位ってわけじゃなくて。あと他言無用はわかってる。
お前がこっち帰ってきたときに連れ込んだりしてたんだったら、どっかよさそうなとこ知ってたりしないかな~って話なんだけど』
…そういうことね。
確かに、ネット情報でそういうところを決めるのはちょっとこわい。入ってみて『え』ってのは避けたいし、下見に一人で行くわけにもいかない。
知ってる奴の口コミが欲しい気持ちはよくわかるけど。
『残念ながら。こっちの部屋と自宅以外に心当たりは露ほどもない』
思わず本当のことを答えてしまったら、拓人が一瞬黙った。
『…え、どういうこと? 自宅でやっちゃったの?』
…しまった。自爆した。
こうなってしまうと、むしろ本当のことを言ってしまった方がいいだろうと腹をくくる。
『いや…俺がこっちに引っ越したときに…ちょっと触るくらいのことはしたけど、そのときはそこまでで』
『ちょっと待てお前…』
言いかけたらいきなりダメ出しされた。
『…念のため聞くけど、引っ越しって…去年の春だよな?』
『うん』
俺は引っ越したのは一回きりだし。
『…付き合い始めた一週間後…とかじゃなかったっけ』
『そう』
よく覚えてるな。
合格発表の日に付き合うことになって、ほぼ一週間後にはこっちに来てた。
しばらく黙ってた拓人がため息をついてる。
『…あんまり具体的なことを聞くつもりもないんだけど…どうなのそれ。ちょっと、お前に対する人としての信頼感が今、崩れ落ちた』
あ、これは自分のレベルで考えてるな。
んなわけないじゃん。俺と結花だよ?
あれ、でも拓人は高校時代に彼女は一度も作らなかったよな。
それなのに千里以外に…経験があるってこと?
え、高2とか高3の頃に?
ずっと一緒にいたような気がしてるけど…言われてみれば部活のない日だってたまにはあったし…
大会後の休養日なんかは、一週間会わなかったりしてたけどさ。
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