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しかし、拓人が千里に何をしても別に俺は構わないんだけど、何で逆はダメなんだろう。なんか、周りの人みんなが結花に対して過保護で、俺が虐げられていないだろうか。
『別に俺たちのことはいいんだよ。
俺が一線を越えないって決めたのは、結花がこっちに住むことになるんだったら、早い段階で結花の父親を口説き落とす必要があったから。
その時にそういう雰囲気を見せたらダメだろうなと思って、一年待つって決めてただけだし』
そう言うと、拓人は『ふ~ん』と頷いてる。
『そういうことに興味ない奴なのかと思ってたけど、裏ではやることやってるわけだ。
ある意味、ちょっと安心した』
そんなことを言われて、口をとがらせる。見えないだろうけど。
『お前らは…場所を探すってことは、そういうこと?』
二人とも自宅生だからな。地元でってわけにはいかないだろうし、あんまり都心の方に出ると危険な感じがするし。よく知らないけど。
『まぁ、俺も夏に手を出そうとしたんだけど、そのときは千里にきっぱり止められて。
合格発表の翌日だったかな、約束通り改めて連れ込んだ』
随分あっさり言うけど…自分だって夏にやらかしてるんじゃないか。
確かに千里なら泣いて抵抗したりじゃなくって、理路整然と拓人のことを論破して止めそうだよな。
『翔さんじゃないけど…泣かすなよ』
と思わず俺までくぎを刺してしまった。
どうしても北見拓人=軽い奴みたいな当初のイメージが抜けきらない。
まぁ、それでもあいつが夏から半年、手を出さずに待ってたってところは、信頼していい面だと思ってるけど。
千里は俺にとって特別な存在というわけではないけれど、それでも妹みたいには思うから、拓人にいいようにされるのかと思うと…どうでもいいとは思っていたけれど、実際にやったと言われると若干微妙。
全然知らない相手なら、拓人が何をやろうが知ったことじゃないんだけど…やっぱり千里には笑っててほしいと思うな。
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