プロローグ

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「いやでもその女子が選手の一人と付き合って、揉めただけでこうやって消えるんじゃん。そもそも何しに入ってきたんだよって言うか」 「男子チームのマネなんて、本気でやろうと思ったらめたくそしんどいじゃん。 遊び半分で入ってくるのは、しょせんそういうことよ」 「…男狙い」 「…だよな~」 「しかも狙われる男は特定の一部であって、俺たち一般部員ではないわけだから」 「…そういう自虐的なことをわざわざ言わんでいい」 「まぁ、俺らも凌太郎が参入してくれて常勝チームに跳ね上がっただけで、もともとそんなに強かったわけじゃないしな」 「でもそれを言ったら、凌太郎狙いの女とか意外と来ないよな」 …男子部のマネについての話題になると、さすがの俺もやや耳が反応する。 練習が終わったところなのでサポーターを外し、ソックスを脱ぎ… …あ、結花がつけてくれたミサンガが取れそうになってる。 「あ、切れそう…直そうかな」 思わず呟くと、隣にいた一徹に突っ込まれた。 「お前、切れたら願い事が叶うと言われているミサンガを補修してどうするんだよ」 …それもそうか。 「でも、もったいないじゃん。せっかくつけてもらったのに」 結花がつけてくれたんだから、大事にしたいんだけどな。 あと何本くらいの糸でつながっているのだろうかと、脚を覗き込んでいたら健斗にもため息をつかれてしまった。 口をとがらせて、補修すべきかどうかを考えていると、 「っていうか、凌太郎。 彼女、高校時代のマネージャーだったんだろ? どうなのその辺」 水野さんから聞かれてしまった。 耳を素通りしていた噂話に巻き込まれるのは嫌なんだけど、結花についておかしなイメージを持たれるのも嫌だから話しておくことにする。
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