手を携えて共に

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「結花、ここから試合の後の解散まで、公式で行くから」 わざわざ呼び名を変えたりはしなくてもいいだろう。もう子供じゃない。 もともとキャプテン業は演技派の俺だから、切り替えようと思えばどうとでもできるんだ。そうしなきゃと思っていなかったことが問題だっただけで。 結花も、三上さんとたくさん話をしたんだろう。何も聞き返さずに頷いてくれた。結花はそもそも大丈夫なんだよ。多分三上さんから事情は聞いていて、俺が舘さんに怒られたことも知ってるんだろう。 俺が切り替えたことを理解してくれたのがわかる。 「はい」 俺は公式キャラのときもあんまり態度自体は変わらないけど、結花は完全に敬語のマネージャーになっちゃう。確かに学年が一個下だし、わからないことはないんだけど…かなり寂しい。 まぁ、仕方ないか。 高校時代にもう一度戻ったと思って、楽しむことにしよう 三上さんに軽く会釈をしておいて、水野さんたちの傍に駆け戻った。 浮かれてる場合じゃない。 水野さんと一緒に戦える、最後の頂上決戦だ。 地に足付けて、俺たちが今できる最高のパフォーマンスを。 俺は自分が絶好調だと思ってたけど、そこに周りとのコミュニケーションがすっぽり抜けていた。多分、ふわふわ舞い上がったまま試合に入ったら、俺がから回って、何か事故を起こしたかもしれない。 ちゃんと叱って引き戻してくれた舘さんには、心から感謝だ。 そこから先は真面目な打ち合わせをしながら、宿舎まで移動した。 去年俺はこの試合に出てるんだから、今年の一年生だって起用の可能性はゼロじゃない。でも上級生を下げてまで使いたい一年というのは、今年は残念ながらいなかった。 コーチも俺も、勝てるのであれば上級生を使いたいというところで一致してるから、点差がつけば俺だっていつでも下がる。 グリコも高い塔もいったん忘れて、試合に集中。
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