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つまり、今これから外出すること自体は、ちゃんと許可を取ればできるんだけどさ…
でも、新幹線の中であれだけ一大決心をして結花と距離を保っていたのに、『ちょっと二人で出かけてきます』とも言いずらい。
かといって、舘さんに嘘をつくとかありえないし、そもそも結花が許さないだろう。
でもなぁ、あの兄貴がこんな風に言ってきてくれてるのに、断るのはもったいないと思うんだ。兄貴のやることには、今までも絶対に間違いがなかった。
何で? と思っても一旦従っておけば、あとからその行動の理由がわかったりするし、それが結果的に俺のためになる行動だったりするんだ。
メール画面を眺めたまましばらく迷って、決められないから結花に相談してみたら、怒られた。
「凌、大事な家族が呼んでくれてるんだから、行かなきゃダメでしょ。私も呼んでくれてるんだったら、一緒に行くよ」
そう言って、俺がポカンとしている間にさっさと舘さんに事情を話して、外出許可を取ってくれた。
…そうか。これは結花と一緒だけど、結花とのデートではない。家族に呼び出されての集合だ。
何となく自分の中でそんな言い訳…というか理屈をひねり出してしまった。
俺はよく『頭が固い』とか『融通が利かない』とか言われる。主に拓人から。
わかっちゃいるんだけど、とっさに考えちゃうんだよな。
『これは、よくない判断じゃないか』『間違ってるんじゃないか?』って。
真面目にキャプテンモードをやってるときは、特に慎重派。
普段は…かなり行き当たりばったりな自覚があるんだけど。
ピッチでそんな俺を常に前に引っ張ってくれていたのが、拓人。
結花は、俺が暴走しすぎたら止めてくれるくせに、こうやって立ち往生してたらちゃんと前へ手を引いてくれるんだ。
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