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俺も結花も、外出用の私服なんて当然持ってきていない。
ジャージ以外の服を持っていたことの方がラッキーだ。
一番ましに見える格好に着替えて、結花と二人で外に出た。
宿の食事が二人分浮くけど…誰かが代わりに食ってくれるだろう。これだけ野郎がたくさんいるんだから。
時間がないのと、お互い初めてきた街だからってことで、駅に直結の大きいホテルのレストランに呼んでくれた。
兄貴と若ちゃんはここに二泊するんだって。
…大人っていいな。
俺たちが試合のために来てるのはわかってるから、ドレスコードが必要なレベルではないし、食事に必要な時間だけって言ってくれてる。
待ち合わせはホテルのロビーだけど、食事は中のレストランじゃなくて近くのお店を予約してくれたんだって。
そんな気遣いもありがたい。
そうは言っても、俺はもう試合に向けて気持ちを固定してしまっているし、早めに帰ってストレッチとかしたい。
完全にキャプテンモードに入っちゃってる…というか意識的に入れたから、あんまり甘ったれモードに戻さない方がいいだろうとも思う。
おいしいものは大歓迎だけど、アホみたいな食い方はもうしない。まだあと丸一日ちょっとあるとはいえ、身体が重くなるんじゃ本末転倒だ。
兄貴が大学生になった頃からは、俺も部活部活で外にいることが多かった。
朝イチで家を出て、夕方遅くに帰ってくるみたいな生活。
だから、こんな風に試合の前にゆっくり向かい合って食事をしたことなんて、ほとんどなかったと気づく。
怪我の後はリハビリのこととか、引退してからは受験のことでよく話を聞いてもらったけど、それだって回数としてはそんなに多くなかったはず。
基本的に忙しい人なのに、俺のために時間を作ってくれたことを、心からありがたいと思う。
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