39人が本棚に入れています
本棚に追加
水野さんから、飯の写真を撮って来いと指令を受けていたので、兄貴たちに断って食う前に撮った写真を見せびらかしてやる。
ちゃんと、本当に兄夫婦(予定)に呼び出されたんだという証明にもなるから、兄貴や若ちゃんもちょっと映るように撮っている。
メインだけでなくて、結花と若ちゃんが頼んだデザートまで何枚も見せてやった。
「うっわ、凌太郎。
なんてもん食ってんだよ、一人で! 俺にも兄貴くれよ!」
ゴロゴロ見えるでっかい肉の塊に、水野さんが大声でわめいてる。
「なに、凌太郎って兄貴と双子?」
「本当だ。顔のパーツがほぼ一緒。でも兄さんの方がカッコいいかも」
一徹や健斗も寄ってきて、健太さんの披露宴でも言われたネタを再現してくれてる。知らないはずなのにな。
「いいでしょ~。でもうちの兄貴は時々怖いからね」
そう言っておくと、結花が隣でクスッと笑った。
試合前とは思えない和やかな夜を過ごして、でもここでもう一段階シフトチェンジだ。
一時間くらい休んで、外出してたメンバーが帰ってき始めるころ、俺は舘さんに一言かけて走りに出た。
「…凌太郎ってさ、こっちモードに入るとなんかすごいストイックだよね」
後ろで聞いてる水野さんに突っ込まれる。
「ちょっと食いすぎたんで、腹ごなしに」
もともと俺は走るのが趣味なんだよ。
リハビリ期間中だって、結花のめを盗んで走りすぎては見つかって通報される…ということを数回やったし。
風が身体に当たる感じがすごく好き。
あ、俺が試合を好きなのも、同じ理由かもしれないな。ボールを触るのももちろんだけど、持たずに走ってるときもすごく楽しい。
「迷わないように気を付けろよ」
舘さんからそんな言葉を掛けられながら、明るい道を選んで宿舎周りをぐるりと走る。
さすがに知らない街だから、ひと区画回って宿舎の入り口に戻ったら別の区画を回ってみるって感じで。
思えば、新幹線に乗る時点では、俺は全然試合に向かう精神状態じゃなかった。多分あのままへらへらしたまま大阪入りしていたら、下手したらフィジカル面も調整しきれなかったかもしれない。
舘さんが一喝してくれて、そこからちょっとずつ切り替えて行けたから…今は完全に絶好調。
最初のコメントを投稿しよう!