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誰が相手でも、負ける気はしない。
適度な緊張と、沸き立つような高揚感。
昔から、勝てる日の朝は大体こんな気分だ。
今年の東西頂上決戦は、たまたま去年の頂上決戦と同じカードになっている。
ちらほらと見知った顔もある相手チームを懐かしく思いながら、去年の夏は傍にいなかった結花がベンチにいてくれる幸せをかみしめ。
誰も大きな怪我をすることなく、俺たちは無事に医学部リーグ頂上二連覇を達成した。
そうそう、拓人が千里を連れて大阪まで応援に来てくれた。
俺は内心、それを口実に旅行気分を味わいたかったんだろうと思ってはいるけれど、お互い様だから別にいい。
普通の大学のグランドだから、客席があるわけじゃない。
グランドの外周から自由に見ていっていい形だけど、俺の動きを追いやすいように、前半と後半でサイドを変えて左側にいたから…今度会ったらダメ出しを食らうんだろう。
でも、それもまた楽しいし…もっとチームを強くするヒントが見つからうなら、なんでも言ってくれた方がいい。
ヒロと翔さんも日帰りで見に来てくれてて、拓人たちと四人で楽しそうにしゃべってるのが遠目に見えてちょっとうらやましかったんだけど。
でも、俺はピッチで走り回ってる方がもっと楽しいし、何より結花が同じ場所にいてくれるんだから、十分すぎるほど満足だ。
兄貴と若ちゃんが来てるって、拓人には朝のうちにメールを送っておいたから、待ち合わせてちょっと話したりはしてたみたいだ。
でも、拓人たちはサッカーという競技を見に来ているのに対して、兄貴たちは保護者枠で俺を見学に来たわけだから、当然見方も違ってくる。
試合が終了して、皆で大喜びして…落ち着いた頃には兄貴たちはもうグランドにはいなかった。
きっと、すぐに空港に向かって東京に飛ぶんだろう。
俺と結花が提案して、一徹と健斗を中心に鬼の短期育成を施した新生チームは、大成功の結果を収めた。
そして、水野さんとの最後の夏が終わる。
ひそかに心に決めた通り、今年一年無敗で送り出してやる第一歩を達成した。
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