プロローグ

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でも、顧問の仕事については適当な返事しかできない。 だってほとんど関わりなかったし。拓人やヒロに聞けば、今ならわかるかもしれないけど。 今から思えばこの程度の認識で、よく『教師になってサッカー部の顧問をやろう』とか思ってたよな、過去の俺。 「…結花ちゃん、うちのマネージャーになってくれたり、しないの?」 水野さんが踏み込んだ。水野さんには、一番に結花の合格を報告して、彼女の楓さんにお礼を伝えてもらった。 …この話の流れ、そう来るだろうと思ってちょっと身構えてたところだ。 「まだ合格が決まったのが数日前だし、直接は会えてないから話してないですけど…俺は、入ってほしいとは思ってないです」 そう。 もう個人的に付き合ってるんだから、同じ部に所属しなくても構わない。 むしろ、部員全体の管理が義務になってしまったら、余計二人でいる時間が減る可能性があるし。結花は真面目だから、こんな緩い部でも自主的に殿前にいたときのようなマネージャー業務をしてくれるだろう。 俺個人としては、いてくれたら心強いけど… それに数は少ないけど、遠征に堂々と一緒に行けるのはうれしい。 けれども、結花を男の集団の中に置いておきたくないという葛藤。 何よりも結花は、元々楽器を吹いてた子だし。 うちの大学ならブラスバンドだってオーケストラだって、他にもいくつか小さい音楽サークルだってある。 所属が変わるのって、多分これで最後だ。 どの集団に属するかを決めるのは、入学のタイミングじゃないと難しい。もちろん途中で移動できないことはないけれど、やっぱり人間関係は春に形成される。 高校で一度夢が破れた結花が、もう一度チャレンジしたいと思うなら…多分ここがラストチャンスだ。 水野さんは、俺が結花を引き込みたくない理由を察してくれてるみたいだけど、その他大勢からはブーイングを食らった。
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