39人が本棚に入れています
本棚に追加
自分たちが偉いとか全然思ってないけど、部内で付き合うなら覚悟は必要だ。
考えたくもないけど、今後結花と万万万が一うまくいかなくなったとしても、俺たちは周りの人間に迷惑をかけることは絶対しない。
それは結花のお父さんに言われたからではなくて、俺と結花が多分共有している最低限の周囲への礼儀だ。
もし現役時代に付き合っていたとしたって、喧嘩したり揉めたりしても俺たちは普通に部活時間を過ごしただろうと自信を持って言える。
むしろ、俺より結花の方がちゃんと切り替えてそうだ。
「お先~っす」
軽く手をあげて部室を出る。
一緒に抜け出した一徹と健斗に笑われた。
「凌太郎、結構そういうところ天然と言うか、我が道を行くよな」
うちの部は上下関係は全然ない。
一応敬語は使うけど、言ってる内容はタメと変わらず。平気で突っ込むし。
試合中は俺は完全に上級生にタメ口を聞いてるけど、それだけじゃなく普段から態度もほぼ対等。
聞いてて面白くない話をしてる集団から離脱するのに、許可をもらわなきゃいけないとも思わない。
「…用事あるし」
それは嘘じゃない。
今日も俺は部屋から自転車で来てるので、二人に軽く手を振って自転車置き場に向かうことにした。
結花がこちらに越してくるにあたり、俺のすることはあまりたくさんはない。
頼まれたのは、東雲不動産の紹介と事前の打ち合わせ。
内見への同行。これは結花のお父さんも一緒に三人で。
引っ越しは…行く気でいるけど、もしかしたら練習試合が重なるかもしれないからちょっとわからない。
移動が済んでからの方がこまごまと大変だから、父と兄たちが撤収してからが俺の出番だと思っているけどな。
いよいよ、結花と一緒にいられる日常が再開する。
頭の中はお花畑だけど、部活と勉強の手は抜かない。時々にやけるくらいは許してくれ。
いまだに嬉しさがこみあげて、転げまわりたくなることもあるのを我慢して普通に生活してるんだから。
最初のコメントを投稿しよう!