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それ以来、結花と会うたびに練習を休んでないか、休むとしてもちゃんと連絡をしてきたのかを確認されている。
今回は俺も、既に引っ越しへの参入を心の奥底では諦めてるから、こんなことを言えるんだけどな。本当にさぼって何かしようとしてるなら、結花には言わない。
でも、あとからばれたらもっと怖いから、そもそも隠れて休むということをしない。
「だよな…」
しょげていると、結花がキックオフの時間と場所を聞いてくれた。
俺はすでにスタメンだから、事情がなければピッチに出てる。
「引っ越しの片付けが終わって、間に合いそうだったら見に行くね」
結花はそう言って、笑顔で通信を終了した。
…もう受験終わったんだから、律儀に5分で終了しなくていいのに。
でも、もうすぐ毎日でも会えるようになる。
この一年、我慢した自分をほめてやりたいと思う。本当に。
計画通りにやるべきことをこなし、さて寝るかと思ったところに、電話が鳴った。一瞬『結花か?』と思ったけど、液晶に出た名前は『北見拓人』。
ちょっとがっかりしながらも、無視するわけにもいかないから出る。
『なに』
『…お前、もうちょっと愛想よく出ろよ。いくら結花じゃないからって』
む。バレてる。
液晶に相手の名前が出るのは便利。どうでもいい奴に余所行きのトーンで出るのって、もったいなくない?
『だって、入試が終わったのに結花は5分経ったら終わりにしちゃうんだもん』
『苦情は本人に言ってくれ』
『なんか用事?』
俺は基本寂しがりだから、こういう電話は実は嬉しかったりするんだけど。
『ん~用事という程でもないんだけど、ちょっとしゃべりたくて』
このタイミングでこいつが俺としゃべりたいというのは、彼女絡み一択だ。
拓人は去年のインハイ予選が終わった後きっちり千里に告白して、予定通りつきあうところまでもっていった。俺たちと同じで千里も受験だったから、近所とはいえそんなにしょっちゅう会ってたわけではないらしい。
時々メールや電話で聞いてるのはその程度まで。
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