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『なんかあった?』
千里と付き合い始めて、もう8ヶ月近い。正月に会った時は、受験が終わったらどっか泊りに行こうかなとか勝手な希望を語ってたけど、どうなってるんだろう。
『…ちょっとつっこんだ話しても平気?』
…拓人とは、去年のGW以来時々、こうやって電話で話すようになった。
お互いに大きい大会は結果を確認してるから、『おめでと』とか『お疲れ』とかが多いんだけど。時々彼女の話をしたりもする。
俺と拓人はかなり近い位置にいると思うし、結花と千里もそうなんだけど、意外と四人で動くことはない。俺がこっちに住んでるせいもある。
だから、俺にとっての千里は後輩の一人でしかないし、大事な後輩の一人でもある…っていう感じ。でもそれよりも、結花の大切な友人かな。
千里個人に対して特に思い入れはないし、別に拓人が千里に何をしようが全然気にならないんだけど。
俺の判断基準は、『結花が怒ったり嫌がったりしないかどうか』だけだ。
『ん…常識的な範囲なら』
こいつが俺に聞きたいこと…なんだろ。千里からなんか苦情でもきたのか?
俺を経由して、結花になんか聞いてくれとかそういうことかな。
『…お前さ、本当にこの一年、結花に手出ししなかったの?』
『………』
いきなり突っ込まれて返答に困る。
手を出すという言葉がどこまでを指すかによって、答えも変わってくる。
そもそも、正直に答えなくてはいけない理由がよくわからない。
拓人を信用しないわけではないけど、俺が言ったことが仮に翔さんの耳に入ったら…ましてや長瀬家の知るところとなったら、終わりだから。
隠し事をするなら、誰にも口外しちゃいけないと思うんだ。
即答できない時点で、もう答えは決まってるんだけど。
でも、なんといっていいかわからなくて黙ってしまった。
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