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と、女を追いかけて数人の男達もこっちに走って来る。
何処かで見覚えがある様な。
向こうの連中も俺を見た途端に走るスピードを緩めた。
よく見ると、どいつもこいつも中1の時のクラスメートだ。
「ゲッ!せ、千夜?!…畜生!お、覚えてろよ!」
連中は再び走るスピードを速め、俺と女のガキの横を通り過ぎると階段を駆け降りて行った。
「あ、ありがとう…お兄ちゃん」
俺は何もしてはいないんだが、ガキは腕を掴んだまま立ち止まって息を整えている。
女が何故、1人でこんな所にいたのか?
俺はガキに聞いてみた。
「こんな人気のない所に1人で居たら襲ってくれって言ってるようなもんだろ」
「だって一昨日の金曜日に話があるから日曜日、1人で学校の裏手の神社に来て欲しいって言われたんだもん。そしたら告られて…断ったら先輩達が出て来て…」
つまりは振られた腹いせに襲おうとした訳か。
だが、ひとまず厄介事は解決した様だ。
「おい」
「なあに?」
「良い加減、腕離せ」
ガキは俺の腕を掴んだままだった。
「あ…」
ガキが腕を離さないので、俺は腕を振り解くと階段を降り始める。
さっきの連中と違い、俺はガキには興味がないが、女遊びという暇潰しも良いな。
そう思って繁華街に出ることにした俺は神社を後にした。
だが、公園前に差し掛かっても未だに後ろから視線を感じる。
振り返ると、さっきのガキが俺の後を付いてきていた。
「何だよ、あんた。付いてくるなよ。もう襲われる心配はねーだろ」
「そんなのアパートに着くまで解らないじゃない」
ガキはどうやらアパート住まいの様だ。
「んなこと言ったってなあ。俺もこれから繁華街に行くんだよ」
「繁華街?何しに?」
いちいちうるせーガキだな。
俺は足を止めずに、視線を感じたまま前を向いて言った。
「女が合意の上なら問題ないからな。ナンパしてホテルでセックスする為だ」
「何それ?!サイテー!」
「最低だろうが最悪だろうがあんたにはカンケーねー」
「関係あるわよ!さっきの先輩達が口にした千夜って千夜組の事でしょ!?」
ガキの言葉に俺は思わず足を止めた。
「あんた…俺のこと、ひょっとして知ってるのか?」
「うん!」
「うんって…あんた、俺が怖くないのか?」
「怖かったら付いて行かないよ。私のお父さんも千夜組の人だもん」
これは聞き捨てならない。
俺は繁華街に出るのは明日の放課後にすることにして、ガキと公園のベンチに並んで座った。
「あんたの親父、俺ん家の組員なのか?」
だが、そうだとしても何故屋敷に一緒に住んでないんだ。
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