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スカウト
俺は仕方無しで教室に戻る羽目になった。
だが、授業中は結局突っ伏したが。
凛も見てねーし、エスケープするよりマシだろ。
帰りのHR前。
凛に捕まらない様に、俺はカバンを担いで、担任の教師が来る前に、教室を抜け出した。
昨日決めた様に女をハントしようと繁華街へ足を向けるが、まだ時間が早かったか?
俺が狙っている女は、歳上で車を持ったOL。
マンションで独り暮らしなら尚更良い。
俺はまだ明るい繁華街に出たところでカバンからタバコとライターを手に取る。
凛には怒られたが、こんな所まで来ないだろうから、今日は吸えそうだ。
タバコを1本、口に咥えてライターで火を点ける。
昨日は思い切り息を吸ってむせ返ったから、今日はゆっくり息を吸い込んでみた。
煙の独特の匂いがして、心なしか気分が落ち着いた気がする。
煙を堪能すると、俺は今度は息を吐き出した。
煙が俺の口と鼻から出て、もっと吸いたいという欲求が出てくる。
俺は咳込まなくなったのを良いことに、繁華街の一角で夕方までタバコをゆっくり吸って時間を潰した。
時折、通行人が咎める様な視線を向けるが、ギロリと睨み付けてやると、アッサリと視線を逸らした。
夕方になって、そろそろ良いかと短くなったタバコを地面に落とすと足で踏みにじって火を消す。
カバンを担いで、女を物色しながら、繁華街を歩いていると。
「そこのコート着てカバンを担いでいる貴方」
と俺から女に声を掛けるつもりが、後ろから逆に女に声を掛けられた。
どんな女だ?
立ち止まって振り返った俺は女に目をやる。
見るとまだ若い、ビジネススーツを着た、なかなかの美人が、俺に何やら突き出していた。
「私、こういう者です」
どうやら突き出しているのは名刺らしかった。
女から名刺を受け取り見てみる。
『○○芸能事務所所長 高橋冴子』
「貴方、芸能界に興味ない?」
どうやら、この女…冴子は芸能事務所の所長で、スカウトマンぽかった。
だが、○○芸能事務所なんて見たことも聞いた事もない。
「所属タレントは?」
「まだ立ち上げたばかりで居ないけど、うちの事務所に入ったら芸能人として1流に育ててみせるわ。どう?」
そんな事言われてもよ。
立ち上げたばかりの危なっかしい事務所に入る気は毛頭ない。
そもそも芸能界自体に興味ねーし。
だが…俺は目の前にいる冴子という女に興味を持った。
「事務所所長自らスカウトしてるのか」
「他に所員が居ないからね。何なら話だけでも聞いていかない?そこに車を止めてあるの」
俺は冴子に誘われたのを良い事に、車の助手席に乗って、カバンを後部座席に放った。
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