7人が本棚に入れています
本棚に追加
無事に通過儀礼? をクリアした僕とソピアはその夏、結婚式を挙げた。
僕のもとには、会ったこともない遺伝上の親戚から大量の祝電が届いた。巨獣狩りの一件が、コロスを越えて銀河中のニュースになったからだ。あからさまな反応に呆れたが、ソピア側の親族も急に増えたというので、これは人類のさがなのだろう。
「トモヒロの狩ったケルベロス、これまでで最大級らしいよ。引きがいいなあ!」
「……十三針も縫った人の発言とは思えないよね」
あの狩り以降、ヘルメス君とは特に仲良くなった。コロス人の価値観は理解しきれないが、僕たちはお互いを尊重し、うまくやっている。それが親戚づきあいというものだ。まあ、なんか普通に友だちって気もするが。
『魔の谷のオルフェウス』という、ちょっと恥ずかしい二つ名がついた僕には、声楽家としての仕事が順調に舞い込んでいる。ソピアが所属するオーケストラとの共演も決まり、今は夫婦ともども音楽漬けの日々だ。
そんな生活も、来年にはがらりと変わることになるだろう。数日前、僕はソピアから妊娠を打ち明けられたのだ。
僕とソピアに遺伝上の子どもができる、なんて素敵なんだろう! 僕たちは子どもを育て、そして家族になるのだ。
その週末、僕たちはソピアの実家に出向いて吉報を伝えた。
お父さんは、泣いて喜んでくれた。
最初のコメントを投稿しよう!