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二人ともテーブルの上にお弁当を広げている。彩りがきれいなのは理咲ちゃん、女性にしてはボリュームがあるのは柚香さんだ。
理咲ちゃんの隣に腰を下ろし、お弁当を広げながら、
「まだ、やらかしてませんよ。さっき――」
「うわ! 加納が手作り弁当!」
驚きの声をあげて私の言葉を遮ったのは、立花慧巡査部長だ。こちらもお弁当を手にしている。愛妻弁当だ。
「誰に作ってもらったんだよ?」
柚香さんの隣のイスを引きながら立花さんが言う。
「失礼な! 私だって本気を出せば、これくらいできるんですよ」
「本気を出せば、な」
食欲を誘ういい香りとともに聞こえてきたのは松田和輝巡査部長の声だ。トレイにカレーを載せた松田さんは私の隣に座る。
四月から七月、九月に行われている警視庁音楽隊による水曜コンサート。七月最後の水曜コンサートを終えた私たちは、遅い昼食を食べている。食堂は時間が遅いせいか、人もまばらだ。
「本気を出した結果!」
「お弁当の中身が、久遠と同じだろうが」
松田さんが冷静に指摘すると、柚香さんは言葉に詰まる。
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