18人が本棚に入れています
本棚に追加
「みゆりん、料理は人並みにできますから味は保証しますよ。唐揚げ食べます?」
柚香さんが、唐揚げが入ったタッパーを回す。
理咲ちゃん、立花さんが唐揚げを取り、タッパーを松田さんに回す。柚香さんが食べ物を人に分け与えるのは珍しい。唐揚げは残ったら晩酌のつまみにしたはずだ。
「残りは私の夕飯ですから。ビール飲みながら、唐揚げつまむんだー」
唐揚げが残っていることを確認した柚香さんは、タッパーに蓋をする。
「独身だった頃の俺と、大して変わらない食生活してんね、加納。……うまいじゃん、久遠ちゃん」
「ありがとうございます」
「ふっくらしてますね。私、好きです」
理咲ちゃんがもぐもぐと口を動かす。その姿はリスが食べ物を食べているようで、可愛らしい。おいしそうに食べてくれるのが嬉しい。
「松田、うまいよな」
立花さんの声に、松田さんを振り向く。
松田さんは私を見ると、ゆっくりと頷く。目つきに定評のある松田さんだが、今はその目に鋭さはない。
「おいしかった」
「あ、ありがとうございます」
面と向かって松田さんに褒められて、気恥ずかしくなる。早起きして作ってよかった。
最初のコメントを投稿しよう!