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すると、突然私の携帯電話のベルが鳴り出した。静けさを纏ったその空気は、一際静寂を引き立たせた。
私はそのまま耳に当ていつものように電話を取る。先ほどと同じ番号だ。
「もしもし……」
「…………」
「あなたは今どこに?」
「ここにいます」
「ここに? どこにもいないではないか」
「ずっといます。あなたの目の前に」
私は、はっとして思わず息を呑んだ。
「坊やを探し出してくれてありがとう」
母鹿が「キイー」と一鳴きすると、電話口からは、「ありがとう」と女の声が囁いた。先ほどの声と同じだ。
「あなたが探していたというのは、この子だったのか」
「はい、坊やが無事でほっとしました」
俄には信じられなかったが、不思議とその状況を受け入れている自分に気付いた。
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