雨上がりの月夜に

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「私はこのあとどうなるのでしょう」 母鹿は声を震わせながら私に問う。 「恐らく、処分されることになるでしょう」 「やはり、そうなのですね……」 昼間捕獲した時のように暴れることもなく、噛み締めるように小さく(こうべ)を垂れた。 「意識が朦朧としている中で、私は死を待つしかない、そう覚悟しました。私独りならば受け入れ難くもその運命には従うのだと心に決めていました。でも、今は違います。この子を独りに出来ません」 ゆっくりと立ち上がる様子は、静かに流れる波のように、それでいて強く激しく揺さぶる風のような意思をその瞳に感じた。 「一つお願いがあります」 母鹿の眼差しに吸い込まれるかのごとく私は頷いた。 「私を見逃して欲しいのです。もし私が処分されてしまったら、この子は独りで生きていけません。それだけが心配なのです。ですから、どうか一度だけ」 私の意思とは別に、檻の鍵へと無意識に手をかけていた。 「では私からも、一つお願いを頼む。もう二度とこの村には来ないでくれ。次はもう……」 「わかりました」 深々と頭を下げると、母鹿は子鹿を連れて森へと歩き出した。
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