雨上がりの月夜に

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私は疲れていた。今日はこの小さな村に獣が出たということで、一日中駆り出されていたのだ。 ここ最近は、森林の伐採が進んでしまったためなのか、獣が民家の方までよく出没する。狸やいたちなどの小動物から、危険を伴う猿や(いのしし)、時には熊までもが村に現れては、畑を荒らし人を襲うこともあった。 獣が出たと知らせを受ければ直ちに現場に向かい、捕獲するまで私の休息はない。 この村では、捕獲した際は一旦村役場の近くにある倉庫へ檻に入れたまま保護し、その後村の職員達がその処分の行方を検討する仕組みになっている。 その大捕物の末に、今日捕獲されたものは鹿だった。さほど大きくはなかったが大暴れするので、今は麻酔で眠らされている。 そんな訳で、このようにふざけた話をまともに受けられる状態ではなかったのだが、あまりの沈痛な叫びに、私はその女の話を聞くことにした。
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