21人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「いなくなったというのは、いつ頃のことですか?」
私は調書を開き、女の話を書き取り始めた。
「はい、お昼を過ぎた頃だったと記憶しています。
確かその時は、遅い昼食をとろうと少し坊やから離れた場所に移動しました。ほんの数分だったと思います。それからすぐに坊やの所に戻ると、ミルクを飲み終え寝ていたはずの坊やが見当たらないのです。
私は辺りを見回し、坊やの名前を呼びました。けれども、坊やの返事も泣き声も、全く聞こえないのです。
私は不安になり、あちこちを探しいろいろと声をかけ、必死になって聞いて回りましたが、一向に見つかりませんでした。
すると、突然気を失うように睡魔に襲われ、手足に力が入らなくなり、身体もあまり動かせないようになったのです。
そのため今、私はここを離れることができません。ですからどうかお願いします。私の代わりに坊やを探していただけないでしょうか」
何か事情がありそうな感じではあったが、素性のわからない女の話を、どう受け止めればよいのか私にはわからなかった。
しかし、嘘ではないようにも思えたので、少し探すのを手伝うことにした。
最初のコメントを投稿しよう!