雨上がりの月夜に

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「ただね、今はもう遅く雨も降っていて土砂崩れの心配もある。申し訳ないが夜が明ける頃探してみますね」 「それは絶対だめです! 今すぐ探してください。私の時間は限られているのです。どうか、一刻も早く!!」 あまりにも荒々しく(まく)し立てるので、口から心臓が飛び出すかと思うほどの驚きであった。 強引に急かされた私は、休息を諦め仕方なく女の話に従った。 「心当たりの場所はありますか」 「坊やがいなくなるまでの間、私達は川辺の近くの小さな洞穴のような所で涼を取りながら休んでいました。 ですから、もしかしたら川に溺れてしまったのではないかと、それはもう気が気でないんです」 「その川というのはどの辺りですか?」 「山の麓から1kmほど入った所に、ネジキという壺を逆さまにしたように咲く白い花の木があります。そこの脇を通る川です」 「では、そこに出向いてみますね」 「お願いします」 私は懐中電灯を手に取り、見えない足元を照らしながら、一人山の中を探索した。
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