雨上がりの月夜に

7/13
前へ
/13ページ
次へ
雨もすっかり止み、静まり返った空気は葉音さえ強く聞こえ、私の濡れた身体をじわじわと冷やし始めた。 これ以上の捜索は一人では限界がある。仕方なく私はもう一度女に電話をかけた。 「私の尽くす限り探してみたのだが、あなたの言う赤ん坊とやらは見つけることが出来なかった。私の力不足によるものは百も承知。本当に申し訳ない」 「そんな……そんな……」 力なくこぼすか細い声は、私の胸をきつく締め付けた。 「明日もう一度村の職員達と捜索を試みることにします」 「明日、ですか……」 今にも消えてしまいそうなほど弱々しい声で呟くので、このままでは命を落としかねないような気がして、私は一度会おうと提案した。 村役場の近くの倉庫にいると言うので、私は暗い夜道を背に村へと戻ることにした。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加