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雨もすっかり止み、静まり返った空気は葉音さえ強く聞こえ、私の濡れた身体をじわじわと冷やし始めた。
これ以上の捜索は一人では限界がある。仕方なく私はもう一度女に電話をかけた。
「私の尽くす限り探してみたのだが、あなたの言う赤ん坊とやらは見つけることが出来なかった。私の力不足によるものは百も承知。本当に申し訳ない」
「そんな……そんな……」
力なくこぼすか細い声は、私の胸をきつく締め付けた。
「明日もう一度村の職員達と捜索を試みることにします」
「明日、ですか……」
今にも消えてしまいそうなほど弱々しい声で呟くので、このままでは命を落としかねないような気がして、私は一度会おうと提案した。
村役場の近くの倉庫にいると言うので、私は暗い夜道を背に村へと戻ることにした。
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