【2000字掌編】青空と回し車

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「都築さん、だったわね。覚えてる? 私、志永(しなが)美奈」  小学校の同窓会会場は宴もたけなわだ。都築(つづき)優香は、女子の何人かと談笑していたが、その雰囲気が急激に澱むのを感じた。  声をかけてきたのは、タイトなデザインのスーツに身を包み、艶のある笑顔の女性だった。笑うとえくぼが出来て、ランドセルを背負った美奈の姿と重なった。   優香は結婚を機に地元を離れた。数年おきに催される同窓会への出席は、今回が初めてだった。奥にある姿見で、自分の姿を確認する。丸顔で愛嬌はある方だが、背も低く美人と褒められるほどでない。40歳という年相応の控えめなワンピース姿で、華やいだ美奈に気後れする。 「少し話せるかしら、お邪魔なら遠慮するけど」  明らかに迷惑顔の旧友は、優香の袖を引いた。可愛くて気分屋の美奈は、男子には人気があったが女子には嫌われていた。特に皆と揉めた一件で浮いていて、なのに同窓会には優等生のように出席していると聞いていた。  優香は「ちょっと行ってくるね」と気休めの笑顔を浮かべ、バルコニーへ出る美奈の後を追いかけた。
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