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「お前は岩山にでも思い入れがあるんか?初めて会った日、泣いとったやろ?」
アルマは式の途中にずっと泣いていた。落ちる雫に対してどうすればいいかわからない俺は見ていることしかできなかったけど、できるだけ泣くのを我慢しようとしたのか、ぐっと目元に力を入れた表情をよく覚えている。
何かを言いたそうな顔をしたと思ったら、アルマはすんと黙ってしまった。急かすのも可哀想だし、俺は少し待ってやろうと思いながら、彼女の顔を見る。
黒いまつ毛が蝋燭に照らされて光っている。輪っか状に光る髪の艶も、真珠みたいに光り輝く肌も若さの証だ。
シワもシミもない柔肌は、日に焼けて歳のわりに肌が劣化した俺とは大違いだ。
本当、何でこんなに可愛い子が俺の妻になったのか。縁というのは不思議なものだ。
「……ごめんなさい。」
黙っていたのに突然鼻声になったかと思うと、大きな目から水が染み出たと思ったら、大粒の涙に変わってポロポロと流れ落ちてきた。
アルマが泣いている。頬に一筋の雫が流れ落ちたら、そのあとすぐに頬全体が雨に濡れたみたいになった。
驚いた俺は慌ててタオルを取ってきてアルマの顔に当てた。それを受け取ったアルマはタオルに顔を押し付けて嗚咽している。俺の半分くらいしかなさそうな小さな頭と肩が、しゃくり上げるたびに震えていた。
抱きしめてやった方がいいだろうかとも思ったけど、心に住むもう一人の俺がそれを良しとしない。けれど、できれば聞かないでおこうと思っていた彼女の聖域に、俺はついに足を踏み入らざるを得ないと思った。
「アルマ、お前、好きな男がおったんじゃないんか?」
初夜から慣れた手つきで夜伽を行うアルマは間違いなく少女じゃなくて女だった。
震えながらだったけど、泣き続けるアルマは頷いた。
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