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程なくして、庭の見事な家が見えた。俺の家の二、三倍は金がかかってそうな立派な家だ。 不審がられない様に気をつけながら窓ガラス越しに家の中を見ると、中央の机で俺より若い男と、その奥さんらしい人が仲睦まじく食事をしている。他にも爺さんと婆さんが同じ食卓を囲んでいた。 奥さんははち切れそうなほど大きなお腹を愛おしそうに撫でている。じきに子供が産まれるんだろう。おまけに、ニ歳くらいの子供も同じ机で食事をしている。ぼろぼろこぼしながら手掴みで飯を食うのを祖母が補助していた。 アルマの姿は見えなかったし、絵に描いたような幸せそうな家族の一家団欒に水を刺す気になれなくて戸を叩くのは止めた。 しかし、ここが最後の手がかりだったのだ。ヒントが欲しくて、家の外周をぐるっと一周しようと家の裏まで来た時、聞き覚えのあるすすり泣きが聞こえてくる。 花の咲いた生垣でうずくまって泣いているアルマの姿を見たら、安心して情けない声が出た。
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