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「既婚者と浮気しとったんか。」 「……全部、知ってるんですか?」 「ちょっとだけな。」 「……最初は知らなかったんです。」 鼻をすすりながら聞き取りづらい大きさでボソボソと話し始める。 「……向こうから声をかけてきたんです。………独り身だって言ってた。……それに、もっと若いって。」 確かに若そうな見た目をしていたけど、子供の年齢から推測すると若くても23くらいじゃないだろうか。 どちらにしろアルマよりはずいぶん年上だろう。 「家が離れてても、同じ町なのに、気付かなかった私もバカなんです。でも私、本当に、知らなかったんです。好きだったから、だから全部、最後まで、向こうからお願いされたから、最後まで、なのに、あの人奥さんどころか、子供までいるし、それに、」 「あーもう、喋らんでええ。何となく予想つくわ。」 涙と鼻水で言葉を詰まらせながら話すこの子をもう見てられない。 要するに、アルマは悪い男に騙されたのだ。
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