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「ぐっ!?」
余りの痛みにのけ反り、相田は左手を背中へと向けた。
手に熱い液体が粘り付く。
相田の集中が途切れ、全ての水面が一斉に消失した。
「………いつの間にっ」
振り向くと、土に汚れた白いワンピースの少女が、黒い刃を振り下ろして立っていた。
相田は、手足を1本ずつ砕かれいたはずのスクヴィラに、新たな手足が生えていることに気付く。
「覚えておくが良い。貴様が唯の人間だと思っている目の前の男は、吾の父であり………一流の人形遣いだ」
「くそ。あの状況で………俺と戦いながら予備の手足を繋いでいたのか」
完全に見落としていた。
ただの縫合作業ではない。肩から腕を繋ぐために必要な歯車を地面の上から1つ1つ探し出し、自身の指を一切使わずに糸だけで手繰り寄せ、さらに定められた場所へと精密に固定させる。
それも、相田の攻撃を避け、妨害しながらの作業の中で、である。
思えば、スクヴィラがうつ伏せとなり、常に相田に向けて砕けた手足を見せない向きを維持していたことも、その布石だったと相田は気付かされる。そして、鞄から道具が散乱した状況、戦う意思を見せるも一向に攻めてこないキエフ、それら全てがこの一撃の為に利用されたことを思い知らされた。
相田の中で、再び感情が湧き上がっていく。彼もまた、この程度の怪我で倒れる程に負けられないことを覚悟している。
「だが、もう魔力も残ってはいまい! お前達を殺せる位の力はまだ残っているぞっ!」
痛みを忘れるように相田が叫ぶ。
「ぐっ」
魔力が枯れ、自分の動きすら満足に操作できなくなったスクヴィラの横顔を殴りつけた。幼き姿といえど容赦をしない。相田は、姿勢を崩した彼女の手から黒い刃を奪い取ると、そのまま大きく振りかぶった。
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