第二章 親子共闘

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―――5分後。  相田の視界は、雲の隙間から見える青い空が徐々に広がっていく様子が映し出されていた。 「………俺は、皆の下に戻る」  まだ彼女を看取れる時間が残っているかもしれない。我に返った相田は踵を返して街へと向かおうとするが、最初の一歩で体をよろめかせ、自分が思う以上に力が入らないことに気付いた。  両足から赤い血が滴り落ちている。背中に手を当て、自分の視線にその手を運ぶと、それは赤く染まっていた。 「参ったな」  誰が見ても重症。相田には回復する手段がなく、そもそも回復魔法を受け付ける体ではない。 「どっちが勝ったのやら………」  相田は後ろを振り向く。そこには、キエフが目を開けたままのスクヴィラを抱いたまま肩を震わせていた姿があった。いつもの彼女ならば、『放すがよい』と照れながら父親を突き放すのだが、その反応はない。 「………本当に。悪いのはどちらなのか、分からなっ………くなる」  眩暈で倒れそうになるが、相田は必死に足を広げて耐えた。  最早、街まで戻る体力すら残っていない。そう判断した彼は、再び踵を返すと2人の親子へと向かう事にした。 「キエフさん。彼女の核を………」 「………相田さん?」  キエフが顔を上げる。大人としては恥ずかしくも、多くの感情を見失っていた相田には、羨ましい程にその目は赤く腫れていた。 「まだ………間に合うかもしれない。自信はないが、貸してくれないか?」  相田が咳き込み、ついに血が混じる。 「早く」  キエフは彼の意図する事を理解したのか、小さく頷くやすぐに彼女の背中の枠を外し、人形の中に収められていた黒い水晶球を取り出した。 「お願いします」  彼女の全てが込められた魔水晶を相田に預ける。 「さて………上手くいけばいいが」  掌の中で魔力を注ぐイメージを高め始めた。魔王を目覚めさせる程の魔力ともなれば、それは膨大な量を生み出す必要がある。  さらに、相田は自身の能力により『破壊』は可能でも、治療や修復といった技は持ち合わせていない。
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