第三章 繰り返される歴史への一穴

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――――――――――  少女は目を開いた。 「スクヴィラっ!」  その視界の半分が父と呼んだ男の顔で埋まっている。彼は娘の目が開くや、溜めていた涙を一気に放ち、互いの両頬を濡らし始めた。 「相変わらず大袈裟な奴だ………十二分に聞こえておる。そう、大きな声を上げるでない」  視界が定まり、スクヴィラは自分の手足が動く事を目視で確認する。関節を動かすごとに体から複数の異音が鳴るが、今すぐにどうなるものではないと判断した。 「状況を………」  上半身を起こし、父親であるキエフの体を手で押し返す。  相田と戦い、魔力を使い果たした。  そこまでは覚えている。  スクヴィラが周囲を確認すると、少し離れたところで鳥娘(ケリケラ)が、そして自分が殺したはずのメイド(コルティ)が、主人の名を叫びながら淡い光を放っている姿が見て取れた。 「随分と頑丈な奴だ………吾は間違いなく心臓を突いたのだぞ」 「………同魂の儀の応用だろう。同化した魂の一部を分離させ、それを生贄に自身の死を回避するなど、流石の余も驚かされた」  いつの間にか、今回の発起人が横に立っていた。 「今やあの者は余が巡り、出会ってきた何百というコルティの魂と同じ数の命を保有していることになる」  それは、ほぼ不死なる存在を意味する。 「口に出すのも腹立たしいが………賭けは、貴様の勝ちの様だ」  スクヴィラが呆れ、失笑する。  だが、男は首を左右に振った。 「いや、この結末は余の考えていた未来(勝ち方)ではなかった」  男はスクヴィラに手を向けると自らの魔力を解き放つ。すると彼女の体に淡い黒が纏わり始めたが、それらはすぐに消えていった。
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